その家のために、この木を伐る
家づくりのこだわり伐る
素朴屋の魅力。それは大工でありながら、木樵でもあることだ。これから建てるであろう家の姿を想像しながら、木を伐る。この唐松を大黒柱にしよう。この檜なら美しい床になるはずだ。楓はキッチンの天板に、欅は重厚なテーブルだな。針葉樹に広葉樹、山にある様々な木々たちの将来を想像しながら伐る。何をかっこいいこと言ってやがる、などと思ってはいけない。なぜなら本当にかっこいい事だからである。素朴屋の社長、今井久志は、相当に腕の立つ木樵である。狙った隙間に、ピタリと大木を倒す。大工の腕前は、中の上だけど。
お浄めの儀式は、
欠かさない
お浄めの儀式は、
欠かさない
木の命を頂くのだから、木への感謝を忘れてはならない。塩と日本酒を伐らせていただく木にお供えし、「決してぞんざいには扱いません。立派な家の一部として使わさせていただきます」心からの祈りを捧げてから、伐採作業に入る。素朴屋では、お施主さんの土地の木を伐採し、その木を柱や梁の材料に使うことが多い。家を建てる人と、住む人が一体となる。
安全に完璧に倒す
安全に完璧に倒す
伐採には細心の注意が必要だ。いい加減なことをすると命に関わる。まずは空を見上げる。木の重心は?周りの木との関係は?次に、木を背にし倒す方向を慎重に見定める。いよいよ倒す。倒す方向と直角にチェンソーを正確に入れる。受け口が正しい方向か再確認し、追い口に刃を入れる。楔を打ち込む。木はゆっくりと傾き、やがて倒れる。刃の入れ方が正確でないと、思った所には倒れない。
木樵は空に舞う
木樵は空に舞う
伐採現場は森だけではない。狭い住宅街にも巨木は立っている。当然倒すスペースなど無い。木樵は空師となる。外国ではアーボリストなんて呼ぶ。クレーンに乗り、ロープにぶら下がり、天空でチェンソー、鋸、鉈を自在に操る。枝を落とし、上から少しづつ伐り進めていく。伐った木はバサバサ落とさない。小さく見えても木は大きく重い。屋根などすぐ破壊できる。ロープでそろそろと地上に下ろす。
伐ったら植える
伐ったら植える
100年後に素朴屋が建てるための針葉樹を、伐採現場に植樹する。針葉樹は実は弱々しい。広葉樹の逞しさに負ける。せっかく植えたのに広葉樹に負けて枯れてしまう。除伐という作業を行う。広葉樹を幼いうちに伐る。とても不自然な行為だ。広葉樹が針葉樹を駆逐してこそ自然。普通の人は気づかないだろうが、植樹した山は不自然で歪な姿を見せる。自然に謝罪しつつ除伐する。