「シキの作庭」の國分さんに今回の作庭の感想を聞かせて頂きましたので、ブログでシェアしていきます。
素朴屋 株式会社のモデルハウス。設計場の庭の構想 今井様からご依頼をいただき、実際に建物を拝見しますと、まあ素朴でそのまんま。
立地は大泉の小学校跡地。 富士を眺める田園のなかに、のびやかに広がる板葺きの大屋根が佇む。 まわりは校庭のなごり、白州の砂に一軒の平屋。
とにかくだだっ広い、 さてどうしたものかと悩むこと半年。。。 諏訪の藤森さんが建てる素材を自然のものに由来する建築に似るが、さてどうするか。。
自然には自然で。 伐採から一貫して建築を刻む自然は大工集団の建築。 大工に対する庭師の回答として、
植木と石、そして建物を安定的にみせる地形造作(地割)を すこしづつ紬だしていく作業の果て、コンセプトとなるイメーチスケッチを完成。後は現場で、庭を彫りだす。
が、まずその前に素材探しから。。。。 八ヶ岳南麓、石には事足りない。
探せは近くで巨石もある。 素朴屋建築には巨石で対応。 ただ探せど探せど、どうも野暮ったい石ばかり。
ダメもとで飛んだ神奈川は真鶴町、日本屈指の石・本小松石の産地だ。 庭師には馴染みの日本を代表する庭石の産地。 私がこの仕事を始めた十数年前、見学に行った依頼の訪問。
あの頃と同じように、あずき色の巨石が並び、ひとつのインスピレーションが涌く。。
八ヶ岳や南アルプルの山並み、その稜線を彷彿とする石の稜線。 素朴屋建築の大屋根に、庭から石と石の隆起する地形と稜線でバランスを取る。
庭の役割とは、建築を安定させること。住空間の環境を安定させること。 これに尽きるのである。
大枠のコンセプトもまとまり、イメージスケッチを今井様と共有し、やっと現場が動き出す。
まずは最終的な石の調達。 ただそこで、作庭者と建築家の面白い化学反応が起きる。
のちに「素朴屋の眠り猫」となる景石の発見だ。 ふたりで真鶴へ石の選定へ行った折り。。。
どうも施主(建築家)は私のアイデアに不満があったようだ。 なにかというと、「綺麗すぎる」ことだ。
我々作庭者はあくまで、庭の主人ではなく、あまり奇抜な提案はしにくい。
石と石の稜線に現れるように、綺麗すぎで面白くないのだ。。。
概ねコンセプトとおり、石を選び、さて室内から富士を望む位置にもってくる景石を 今井社長が、上記の不満のうえに選び出した。。
長さ3m 推定3トンの凸凹と階段状になった変わった石だ。 その時は内心、大変悩ましい石を選んでくれたなと思ったが、これが後日据えてみてビックリ。
田園で寝ころび、富士を眺める「素朴屋の眠り猫」の完成でした。
庭は主人と庭師の共同制作。まさにこれが最たる例かもしれない。。
こうした面白いエピソードを綴りながら、建築を・空間を安定的に保つ地形造作や 元の環境が学校であり、
敷地内には今も老木の桜が立ち並ぶことから、植栽も枝垂れの滝桜を一本。 多くの石と、建築を取り巻く
ように連なる石と芝の丘に秋草、冬から春を告げる蠟梅のみを配置して、 庭が完成して、また来年も成長
していくことかと思います。
多くの職人出入りする素朴屋株式会社の社屋といえる建築の庭は、人々が寄り集まり、
和める雰囲気を 纏い、だれの力か自然に従い、めでたく完成いたしました。
シキの作庭 株式会社 代表取締役親方 國分 基彦