2023.02.17(金)

八ヶ岳でのセカンドステージ

八ヶ岳でのセカンドステージ


「今までがんばってくれた馬たち。そんな馬の残りの時間を最高の環境で、幸せに過ごさせてあげたい。」 加齢や病気やケガなど様々理由により引退した馬をお預かりし、生活を共にする場所が、八ヶ岳ホースケア牧場だ。

馬にとっても、人にとっても良い居住環境とは何だろうか。夏が涼しく雨が少ない気候で、蒸し暑い夏が苦手な馬にとって非常に快適な場所とされる清里高原を舞台に、八ヶ岳ホースケア牧場代表・大橋さんの理想の場所作りが始まった。

八ヶ岳ホースケア牧場代表の大橋さんは大阪生まれ大阪育ち。

大橋さんはパソコンがパソコンとして知名度を持つ前から、システムエンジニアとして活躍していた。デスクワークによる運動不足解消の目的で、ゴルフやマリンスポーツなど色々なスポーツをしてきたが、いまいち心躍らず。北海道旅行で初めて乗馬をした際の爽快感が忘れられず、ほどなく乗馬にのめり込んでいった。地元大阪の乗馬クラブで乗馬、馬術競技をスタート。仕事と両立しつつ、その時に出会った牝馬ミンクスとともに競技生活を楽しんだ。

そして、ミンクスの競技引退を機に、ミンクスの老後と大橋さんのセカンドステージを考えるようになった。馬のオーナーたちは比較的大都市圏に多く、引退後も気軽に会いに行ける距離に愛馬を置いておきたいと思う人が多い。大都市圏での生活。果たしてそれは高齢馬や故障馬にとって幸せだろうか。

 

事業として考えた場合、馬の養老牧場の需要があることはわかっているが、それと同時に、課題も山積みである。そもそも、高齢馬用のための専業施設や専門スタッフがいるところは非常に少ない。また、経営規模も小さく、ニッチな業界として家族で細々とやっているところも少なくなく、大切な愛馬を預けるとなると不安が残るところが多い。

「それならば一発奮起して、自分で理想と思える牧場を作ろう」、と大橋さんは考えるようになった。

そう思い、数年かけて、北海道から九州まで全国を調査、行脚し、今の山梨県北杜市高根町清里にたどり着いた。そして、2013年秋に、八ヶ岳ホースケア牧場を開業し、ミンクスと一緒に大阪から山梨県に移住した。

広大な地で育った草を食べ、のびのびと放牧できるここ八ヶ岳の大自然は間違いなかった。

試行錯誤しながら環境作りを始め、第一厩舎(きゅうしゃ)、第二厩舎と建設した。

そして、第三厩舎を素朴屋に依頼。自然の中にこそ、木を取り入れた建物を作りたい。大きな開口を実現する木造建築をご相談いただいた。そして、他の施設のノウハウ、使用した経験を元に、改良されたアイディアが詰められた建物が完成した。

カラマツの匂いをまとったそよ風が気持ちよく吹き抜ける快適な空間。

馬たち、オーナーさん達を伺っていると、そう感じていると実感する。

馬は大橋さんにとって、パートナー。

競技の時、つらい時にはそっと語り掛ける。乗り越えたい時、情熱をもって伝えるとしっかりそれに答えてくれる。以心伝心、阿吽の呼吸、そんな言葉がよく似合う生き物。

競技をしていく上で、馬も年齢、能力の衰えには勝てない。

ただ、それだけで用がないというものでは決してない。

一緒に連れ添ったパートナーだからこそ、なおのこと。

 

現在ミンクスは27歳。人間でいうと75歳越えと言われている。

 

 

「果たしてそれで幸せだろうか」

 

ミンクスがどう思っているのか、大阪を離れる時に考えたことの答えは未だにわからない。ただ、ミンクスのことを楽しそうに話している時の大橋さんの表情を見ていて、ミンクスは幸せ者だな、とうらやましく思えた。パートナーとして大地を駆け回り、情熱を注いだかけがえのない時間、そして今も同じ屋根の下、ミンクスのことを話題に、共に過ごしているということ自体が、ミンクスにとって最幸なことだと、私は思う。

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